派遣社員の安全衛生管理は派遣元と派遣先のどちらがおこなうか

派遣先と派遣元の事業者は、派遣社員の安全衛生について連絡・調整を密にして、統括管理しなければなりません。そのため、派遣元における連絡責任者や派遣先での連絡責任者を現場に配して、安全衛生に関する細かい連絡・調整をおこないます。

次に安全衛生管理は、現場でおこなう作業に危険あるいは健康障害の防止対策が必要なので原則として派遣先がおこないます。

その他、雇入れ時、定期健康診断などの一般健康診断は、派遣元事業場が実施し、それらの健診結果にもとづいて適切な事後措置を講じなければなりません。なお、特殊健康診断は派遣先事業場に、その義務が課せられます。

また、安全衛生教育は、雇入れ時の安全衛生教育は派遣元事業場で、作業内容変更時教育は派遣先事業場が行います。

安全管理者の代理者は資格が必要か

安衛則第4条2項により、安全管理者が旅行や疾病などのやむを得ない事由によって、職務をおこなうことができない場合は「安全管理者の代理人の選任」が必要になります。
そこで、この代理者の「資格」については、特段の定めがありません。

安全管理者の資格を持ったものがいればその者を代理者として選任することが望ましい。しかし、いない場合は、安全に関して可能な限り知識や経験を持った者の中から代理者を選任すべきでしょう。

近隣にある関連会社で安全管理者や衛生管理者の兼任は可能か

安衛法第11条を見ると「事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、・・・・のうち安全に係わる技術的事項を管理させなければならない。・・・」と定めています。

また、安衛法第3条では「事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と・・・・労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。・・・」と事業者等の責務を定めています。

ここで言う事業者とは「事業を行う者で、労働者を使用する者をいう」と安衛法第2条第3号で定義されています。

法人企業であれば当該法人、個人企業であれば事業経営主ということになります。
つまり、労働災害防止に努め、労働者の安全衛生を確保することを責務としています。

結論として、近隣にある関連会社は別法人ということになり、安衛法でいう「事業者」が違ってきますので安全管理者、衛生管理者の兼任はできないということになります。

ですから、関連会社が独自に「安全管理者」「衛生管理者」を選任になければなりません。

ちなみに安全管理者、衛生管理者は選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任することと定められています。

安全衛生委員会の議事録に盛り込むべき内容は

安衛法第17条で安全委員会の実施を、安衛法第18条で衛生委員会の設置を規定し、安衛法第19条で安全衛生委員会を設置することを規定しています。

さて、この安全衛生委員会における議事録の作成については、安衛則第23条第3項で『委員会における議事で重要なものに係る記録を作成して、これを3年間保存しなくてはならない』と定めています。

議事録の作成・保存により、決定した事項が確実に実行されたか否かの確認が出来ることや、その時々の事業場の安全衛生上の問題点などを明確に出来るというメリットがあります。

この議事録に記載すべき内容ですが、安衛法上では具体的な定めはありません。ただ、大まかに分けると、
①開催日時  ②場所  ③出席者(数)  ④議題(伝達事項や審議事項など)  ⑤具体的な決定事項  ⑥その他の留意点

安全衛生委員会は、社内教育や点検、パトロールなどの実施状況の伝達を経て、翌月以降における安全衛生上の議題の審議に入ります。特に重要なのが、その時の委員会での審議・決定事項の部分です。決定事項の詳細はもちろん、担当部署や実施時期なども合わせて記載することが望ましい。

安全衛生委員会は、ややもすると『伝達』を中心に開催されがちですが、その本質はやはり『意思決定』にあります。

派遣労働者を含め50人以上になる場合安全・衛生管理者の選任は必要か

派遣中の労働者の取り扱いについて通達(昭61・6・6 基発第333号)で、
①安全管理者などの選任に関して
派遣中の労働者に関しての安全管理者の選任の義務及び安全委員会の設置義務は、派遣先事業者のみに課せられているが、当該事業場の 規模の算定に当たっては、派遣先の事業場について、派遣中の労働者の数を含めて、常時使用する労働者の数を算出する。

②衛生管理者などの選任に関して
派遣中の労働者に関しての衛生管理者の選任の義務及び衛生委員会の設置の義務などは、派遣先事業者及び派遣元事業者の双方に課せら れているが、当該事業場の規模の算定に当たっては、派遣先の事業場及び派遣元の労働者の数を含めて、常時使用する労働者の数を算出 する。

つまり、派遣労働者の数を含め常時使用する労働者の数が50人を超えれば、安全・衛生管理者の選任が必要ということになる。

安全衛生委員会の活動を活性化させたいが

安全衛生委員会は、安衛法第19条で定められた組織であり機能していない状況では、事業者さらには委員会の議長にも責任があります。この場合経営首脳や現場トップの方々の考え方についても議論が必要になる。

実際に経営首脳や現場トップが安全衛生に関心を見せなければ、やはり生産ラインの充実だけが最優先され、委員会活動は有効に働かないものです。

まずは、以下の2点を提案します。
①『過去の災害事例を洗い出す』『疾病件数を調べる(休日日数)』『ヒヤリハット
事例を収集する』『判例当たる(損害賠償金額)』
・具体的例を集めて『安全衛生委員会活動の大切さ』を説明する。
②安全衛生委員会で現場巡視を行う
・現場を知ることが、あらゆる活動の基本です。委員会としての組織の一体感や
安全衛生に関しての動機づけにもつながるでしょう。

あわせて委員会の開催時に、最近発生した大災害やメンタルヘルス、長時間労働などの社会的話題を提供して、委員会への地道な啓発を 続けていかなければと考えます。

安全衛生推進者の選任要件は

安衛則第12条の2で、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場で「安全衛生推進者等」を選任する。
選任にするにあって一定の資格が必要です。
①大学又は高等専門学校を卒業した者で、その後1年以上安全衛生の実務に従事して経験を有する者
②高等学校または中等教育学校を卒業した者で、その後3年以上安全衛生の実務に従事した経験を有する者
③5年以上安全衛生の実務に従事した経験を有する者
④厚生労働省労働基準局長が定める講習を修了した者
⑤厚生労働省労働基準局長が前各号に掲げるものと同等以上の能力を有すると 認めた者
この要件を満たした者の中から選任する。

なお、⑤の「厚生労働省労働基準局長が前各号に掲げるものと同等以上の能力を有すると認めた者」とは、
●安全管理者及び衛生管理者の資格を持つ者
●安全管理者の資格を有する者で、当該資格を取得したあと1年以上衛生の実務に従事した経験を有する者
●元方安全衛生管理者の資格を有する者
●労働安全・衛生コンサルタント
などがあります。

また、安全衛生推進者は原則として事業場に専属の者を選任することとされているが、安衛則第12条の2第2号で、労働安全・衛生コンサルタント、安全管理者又は衛生管理者の資格を有する者で、当該資格を取得した後5年以上安全衛生の実務に従事した者らを選任した場合は、専属の者でなくても構わない。

しかし、通達で、非専属の安全衛生推進者が担当する事業場数は10以内、かつ各事業場を週1回巡視できるような数を目安とする。

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