「一人親方」とは、一般的には労働者を雇用せずに事業を行う者をいいます。
日本では企業による雇用が中心のため、個人事業主である自営業は労働力人口の8%に過ぎませんが、「2017年労働力調査」によれば、建設業の場合は建設業に従事している者の約11%を一人親方等が占めています。
建設業の一人親方等の個人事業主は、自ら事業を行う点で他の事業主と同じですので、自分の判断で請け負った仕事を進めていく立場にあります。労働者ではないため、労働基準関係法令の保護の対象とはなりません。
例えば、労働基準法では、労働者とは「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」(同法9条)と規定されていますが、一人親方は誰かに使用(雇用)されている者ではなく、使用者(雇用主)が労働者に支払う賃金を支払われている者でもないため、労働者に該当しないとされています。
したがって、1日8時間の法定労働時間や残業規制などの働く時間の規制、最低限の報酬を保証する最低賃金、年1回の健康診断を義務づける措置など、いずれも一人親方には適用されないのです。
建設現場で働いている姿からは雇用されている「労働者」か「一人親方」か一見して区別できませんが、一人親方は「一人ひとりが事業主である」という自覚を強く持った働き方が求められているのです。