労災保険と自賠責保険との先行判断

交通事故が通勤中や業務中に発生したら労災保険、自賠責保険、任意保険のどれを選ぶべきかは労働者が自由に決定できます。
なお、帰宅途中に寄り道をした場合には、その通勤災害が逸脱・中断に該当していないかなどの確認を要します。

労災保険と自賠責保険とは

労災保険とは

労働者が勤務中や通勤中に事故や災害に遭った場合に補償される制度で、「労働者災害補償保険法」や「労働基準法」などの法律に基づき国から支給されます。

自賠責保険とは

損害保険会社や自動車の販売店で手続きをおこなう自動車を運転する際に必ず加入しなければいけない強制保険で損害保険会社から支給されます。

「自賠責保険」と「労災保険」の優先順位とは

労災保険と自賠責保険について、どちらを優先させるかについて法律の規定はありませんが、労災保険を管轄する厚生労働省から次のような通達が出ています。

「労災保険の給付と自賠責保険の損害賠償額の支払との先後の調整については、給付事務の円滑化をはかるため、原則として自賠責保険の支払を労災保険の給付に先行させるよう取り扱うこと」(昭和41年12月16日基発1305号)

このため、通勤途中や仕事中の交通事故でも、労災ではなく自賠責保険への申請が推奨されています。
ただ、通達は、労働者に対する強制力はないので、労働者はどちらの保険を優先させるのかを自由に決定することができます。

労災保険を先行した方がいい場合

事故の過失割合が自分の方が大きい時や、過失の割合を相手方と争っていて不明確な場合

自分の過失が大きい時や、過失の割合を相手方と争っていて不明確な場合は、労災申請を先行します。
労災保険を適用すれば、治療費の限度額はありません。一方、自賠責保険では、過失割合が7割以上の場合、5~2割の範囲で保険金が減額されます。

加害者が無保険又は自賠責保険(共済)のみで任意保険に未加入の場合

加害者が自賠責(共済)に加入していない場合は、自賠責保険(共済)への請求ができないため、労災申請を先行します。
また、自賠責保険(共済)には加入しているけれども、加害者が任意保険に未加入の場合、自賠責の傷害部分の支払い限度額である治療費上限の120万円(内訳として慰謝料と治療費、休業補償の全ての金額)を超えそうな場合は、治療費がかからない労災申請を先行させる。

長期の通院が必要になる場合

自賠責保険は損害部分の上限が120万円となります。長期に及ぶ治療になると治療費だけで120万を超すこともあります。
一方の労災保険は治療費がかからないため、自賠責保険と比較すると長期間の通院がおこなえる。

自賠責保険等と労災保険給付の調整

労災保険の休業(補償)給付は、給付基礎日額の80%の支給となっていますが、その内訳は、保険給付の60%、特別支給金の20%となっている。

保険給付60%部分の調整

自賠責等からの給付額を控除して支払うことになるため、自賠責から満額受領している場合には差額が生じませんが、任意保険から減額(過失割合を控除)して支払われた場合は、差額が生じることになる。

特別支給金20%部分について

保険給付と異なり、自賠責等と調整することはありません。
被災者にとっては労災保険と自賠責等の両方へ休業補償、休業損害を請求すると賃金の120%分の休業補償(休業損害)金を受け取れる計算になります。

示談を行う場合について

労災保険の受給権者である被災者等と第三者との間で被災者の有する全ての損害賠償についての示談(いわゆる全部示談)が、真正に(錯誤や脅迫などではなく両当事者の真意によること。)成立し受給権者が示談額以外の損害賠償の請求権を放棄した場合、政府は、原則として示談成立以後の労災保険の給付を行わないこととなっています。
 例えば、労災保険への請求を行う前に100万円の損害額で以後の全ての損害についての請求権を放棄する旨の示談が真正に成立し、その後に被災者等が労災保険の給付の請求を行った場合、仮に労災保険の給付額が将来100万円を超えることが見込まれたとしても、真正な全部示談が成立しているため、労災保険からは一切給付を行わないこととなりますので十分に注意してください。

まとめ

自賠責保険等からの保険金を先に受ける「自賠先行」と労災保険給付を先に受ける「労災先行」との選択は自由に決定することができます。
労災先行の判断基準として①過失割合②自賠責・任意保険等の加入状態③障害の程度などを考慮して先行順位を決定することになる。

一般的には、小さな事故でケガも軽傷であれば、自賠責を使った方が本人にとってメリットが大きいことが多い。なぜなら、自賠責には労災保険にない慰謝料があり、休業した場合の休業損害が100%てん補(労災保険の場合は80%)されるからである。

また、事故の過失割合が自分の方が大きい時や、過失の割合を相手方と争っていて不明確な場合、加害者が無保険又は自賠責保険(共済)のみで任意保険に未加入の場合、長期の通院が必要になる場合などの場合には労災先行にメリットがある。労災保険は、自分(被災者)の過失割合が高くても給付等が調整されることはないが、自賠責の場合は、自分の過失割合が7割以上であると保険金額が20~50%の間で、減額調整されてしまう。そのため社員の過失割合が高い場合は労災保険を申請したほうがよいだろう。

なお、被災者にとっては労災保険と自賠責等の両方へ休業補償、休業損害を請求すると賃金の120%分の休業補償(休業損害)金を受け取れる計算になります。
関係機関と連絡をとり検討をすることが肝要となる。

参考
大阪労働局

お仕事でのケガに健康保険で治療

お仕事でのケガ等に健康保険を使うと、一時的に治療費の全額を自己負担する

労働災害によって負傷、または病気にかかったにもかかわらず、健康保険を使って治療を受けた場合、治療費の全額を一時的に自己負担することになります。
労働災害であるにもかかわらず、健康保険で治療を受けた場合の手続きとして、
受診した病院に、健康保険から労災保険への切り替えができるかどうかを確認して下さい。

① 切り替えができる場合

病院の窓口で支払った金額(一部負担金)が返還される
→労災保険の様式第5号または様式第16号の3の請求書を受診した病院に提出して下さい

② 切り替えができない場合

一時的に、医療費の全額を自己負担した上で、労災保険を請求する
→労災保険の請求方法
イ 健康保険の保険者(協会けんぽ等)へ労働災害である旨を申し出る
ロ 保険者から医療費の返還通知書等が届きますので、返還額を支払う(*1)
ハ 労災保険の様式第7号または様式第16号の5を記入の上、返還額の領収書と病院の窓口で支払った金額(一部負担金)の領収書を添えて、労働基準監督署へ請求する(*2)
(*1) 納付書が送付されるまでに時間がかかる場合がある
(*2) 労災請求の際にレセプトの写し(コピー)が必要となりますので、健康保険の保険者へ依頼する

一時的に医療費の全額を自己負担するのが困難な場合は・・・・
イ 労働基準監督署へ、いったん全額を負担せずに請求したい旨を申し出る
ロ 労働基準監督署で保険者と調整を行い、保険者への返還額を確定する
ハ 保険者から返還通知書等が届きますので、労災保険の様式第7号または第16号の5を記入の上、返還通知書等を添えて、労働基準監督署へ請求する(*3)
(*3) 病院の窓口で支払った金額(一部負担金)については、イ~ハとは別の手続きが必要となりますので、労災保険の様式第7号または第16号の5をもう一枚を準備し、必要事項を記入の上、労働基準監督署へ請求する

参考
一人親方の社会保険加入

通勤途中に交通事故発生

労災保険給付に関する請求書と同時に、第三者行為災害届を提出

一人親方の皆様が通勤途中におきた交通事故の場合には、被災者又はその遺族は、第三者(加害者)に対して被害に対する損害賠償を請求する権利を得ると同時に、労災保険の保険者(政府)に対しても給付を請求する権利を得ることになります。

通勤途中に交通事故が発生した場合、労災保険給付に関する請求書と同時に、被災者が所属する事業所を管轄する労働基準監督署に、第三者行為災害届を1部提出する必要があります。
所轄労働基準監督署に「第三者行為被害届」を提出する際は、必要に応じて次の6つの書類を添付します。

添付書類
1.念書(兼同意書)
・必ず労災保険給付を受ける本人(※)が署名する
※被災者本人またはその遺族
2.「交通事故証明書」または「交通事故発生届(様式第3号)」
・原則として自動車安全運転センターで交付証明を受けた「交通事故証明書」を提出
・証明書の提出ができない場合は「交通事故発生届」を提出
・交通事故以外の災害で公的機関の証明書が得られるときはその証明書を提出
3.示談書の謄本
・示談が行われた場合に提出
4.自賠責保険等の損害賠償金等支払い証明書または保険金支払い通知書(写しでも可)
・仮渡金または賠償金を受けている場合に提出
5.死体検案書または死亡診断書(写しでも可)
・死亡の場合に提出
6.戸籍謄本(写しでも可)
・死亡の場合に提出

労災指定病院とそれ以外では労災保険手続きに違いがあるか

病院・薬局等が労災指定なのか指定以外なのかで、提出する書類が異なる

一人親方様が労災病院や指定医療機関・薬局等(以下「指定医療機関等」といいます。)で診療等を受けた場合、原則として費用負担は発生しません。この給付を「療養の給付」といいます。手続きは、療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)を指定医療機関等に提出します。
原則として、費用が発生しないとは、「指定医療機関等によっては現金で定額を支払ってほしい。」などの対応を迫られることがあります。
しかし、「指定医療機関等」に対し、その場で支払った「領収書」と「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」を提出した場合は、支払った現金を返還していただけます。

一方、指定医療機関等以外の医療機関や薬局等で療養を受けた場合に、いったん病院等に治療を要した費用を支払わなければなりません。
その後、一人親方様が所轄の労働基準監督署に「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号(1))」を提出すると労働基準監督署から一人親方様へその療養に要した費用を労災保険から「現金給付」されます。

参考
(厚生労働省 労災保険指定医療機関検索)

(保険給付の手続き)

一人親方にふりかかる建設業法違反とは

一人親方にふりかかる建設業法違反

日常的に行われている建設業法違反が慢性的となり一人親方様の不利益になるケースがあります。
ここでは、一人親方様が知っておくべき建設業違反を記述します。

1.指値発注(建設業法第19条第1項、第19条の3、第20条第3項)

【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】

①発注者が、自らの予算額のみを基準として、受注者と協議を行うことなく、一方 的に請負代金の額を決定し、その額で請負契約を締結した場合
②発注者が、合理的根拠がないにもかかわらず、受注者の見積額を著しく下回る額 で請負代金の額を一方的に決定し、その額で請負契約を締結した場合
③発注者が複数の建設業者から提出された見積金額のうち最も低い額を一方的に 請負代金の額として決定し、当該見積の提出者以外の者とその額で請負契約を締 結した場合

【建設業法上違反となる行為事例】

④発注者と受注者の間で請負代金の額に関する合意が得られていない段階で、受注 者に工事に着手させ、工事の施工途中又は工事終了後に発注者が受注者との協議 に応じることなく請負代金の額を一方的に決定し、その額で請負契約を締結した 場合
⑤発注者が、受注者が見積りを行うための期間を設けることなく、自らの予算額を 受注者に提示し、請負契約締結の判断をその場で行わせ、その額で請負契約を締 結した場合

上記①から⑤のケースは、いずれも建設業法第19条の3に違反するおそれがあ る。また、④のケースは同法第19条第1項に違反し、⑤のケースは同法第20条 第3項に違反する

指値発注とは、発注者が受注者との請負契約を交わす際、受注者と十分な協議をせ ず、又は受注者との協議に応じることなく、発注者が一方的に決めた請負代金の額を 受注者に提示(指値)し、その額で受注者に契約を締結させることをいう。指値発注 は、建設業法第18条の建設工事の請負契約の原則(各々の対等な立場における合意 に基づいて公正な契約を締結する。)を没却するものである。

指値発注は建設業法に違反するおそれ

指値発注は、発注者としての取引上の地位の不当利用に当たるものと考えら れ、請負代金の額がその工事を施工するために「通常必要と認められる原価」 (「3. 不当に低い発注金額」参照)に満たない金額となる場合に は、受注者の当該発注者に対する取引依存度等の状況によっては、建設業法第 19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがある。
発注者が受注者に対して示した工期が、通常の工期に比べて著しく短い工期 である場合には、工事を施工するために「通常必要と認められる原価」は、発 注者が示した短い工期で工事を完成させることを前提として算定されるべきで あり、発注者が通常の工期を前提とした請負代金の額で指値をした上で短い工 期で工事を完成させることにより、請負代金の額がその工事を施工するために 「通常必要と認められる原価」(「3.不当に低い発注金額」参照) を下回る場合には、建設業法第19条の3に違反するおそれがある。
また、発注者が受注者に対し、指値した額で請負契約を締結するか否かを判 断する期間を与えることなく回答を求める行為については、建設業法第20条 第3項の見積りを行うための一定期間の確保に違反する(「2.見積 条件の提示」参照)
更に、発注者と受注者との間において請負代金の額の合意が得られず、この ことにより契約書面の取り交わしが行われていない段階で、発注者が受注者に 対し工事の施工を強要し、その後に請負代金の額を発注者の指値により一方的 に決定する行為は、建設業法第19条第1項に違反する。

一人親方様は、建設工事の請負契約の締結に当たり、発注者が契約希望額を提示した場合に は、自らが提示した額の積算根拠を明らかにして受注者と十分に協議を行うな ど、一方的な指値発注により請負契約を締結することがないよう留意すべきで ある。

2.見積条件の提示(建設業法第20条第3項)

【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】

①発注者が不明確な工事内容の提示等、曖昧な見積条件により受注予定者に見積りを依頼 した場合
②発注者が受注予定者から工事内容等の見積条件に関する質問を受けた際、発注者が未回 答あるいは曖昧な回答をした場合

【建設業法上違反となる行為事例】

③発注者が予定価格1億円の請負契約を締結しようとする際、見積期間を1週間として受 注予定者に見積りを行わせた場合

上記①及び②のケースは、いずれも建設業法第20条第3項に違反するおそれが あり、③のケースは、建設業法第20条第3項に違反する。

建設業法第20条第3項では、発注者は、建設工事の請負契約を締結する前に、下 記(1)に示す具体的内容を受注予定者に提示し、その後、受注予定者が当該工事の 見積りをするために必要な一定の期間を設けることが義務付けられている。

見積りに当たっては工事の具体的内容を提示することが必要

建設業法第20条第3項により、発注者が受注予定者に対して提示しなけれ ばならない具体的内容は、同法第19条により請負契約書に記載することが義 務付けられている事項(工事内容、工事着手及び工事完成の時期、前金払又は 出来形部分に対する支払の時期及び方法等のうち、請負代金の額を除くすべての事項となる。

見積りを適正に行うという建設業法第20条第3項の趣旨に照らすと、例え ば、上記のうち「工事内容」に関し、発注者が最低限明示すべき事項としては、
① 工事名称
② 施工場所
③ 設計図書(数量等を含む)
④ 工事の責任施工範囲
⑤ 工事の全体工程
⑥ 見積条件
⑦ 施工環境、施工制約に関する事項

が挙げられ、発注者は、具体的内容が確定していない事項についてはその旨を 明確に示さなければならない。施工条件が確定していないなどの正当な理由が ないにもかかわらず、発注者が、受注予定者に対して、契約までの間に上記事 項等に関し具体的な内容を提示しない場合には、建設業法第20条第3項に違 反する。

予定価格の額に応じて一定の見積期間を設けることが必要

建設業法第20条第3項により、発注者は、以下のとおり受注予定者が見積 りを行うために必要な一定の期間(下記ア~ウ(建設業法施行令(昭和31年 政令第273号)第6条))を設けなければならないこととされている。

ア  工事1件の予定価格が500万円に満たない工事については、1日以上
イ  工事1件の予定価格が500万円以上5,000万円に満たない工事に ついては、10日以上
ウ  工事1件の予定価格が5,000万円以上の工事については、15日以 上

上記期間は、受注予定者に対する契約内容の提示から当該契約の締結又は入 札までの間に設けなければならない期間である。

そのため、例えば、4月1日 に契約内容の提示をした場合には、アに該当する場合は4月3日、イに該当す る場合は4月12日、ウに該当する場合は4月17日以降に契約の締結又は入 札をしなければならない。ただし、やむを得ない事情があるときは、イ及びウ の期間は、5日以内に限り短縮することができる。 上記の見積期間は、受注予定者が見積りを行うための最短期間であり、より 適正な見積が行われるようにするためには、とりわけ大型工事等において、発 注者は、受注予定者に対し、余裕を持った十分な見積期間を設けることが望ましい。

一人親方様は、工事を受注する際には工事の具体的内容について確認し、見積もりを提出する。
できる限り、口頭ではなく、書面による契約が望ましい。

3.不当に低い発注金額(建設業法第19条の3)

【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】

①発注者が、自らの予算額のみを基準として、受注者との協議を行うことなく、受 注者による見積額を大幅に下回る額で建設工事の請負契約を締結した場合
②発注者が、契約を締結しない場合には今後の取引において不利な取扱いをする可 能性がある旨を示唆して、受注者との従来の取引価格を大幅に下回る額で、建設 工事の請負契約を締結した場合
③発注者が、請負代金の増額に応じることなく、受注者に対し追加工事を施工させ た場合
④発注者の責めに帰すべき事由により工期が変更になり、工事費用が増加したにも かかわらず、発注者が請負代金の増額に応じない場合
⑤発注者が、契約後に、取り決めた代金を一方的に減額した場合

上記のケースは、いずれも建設業法第19条の3に違反するおそれがある

「不当に低い請負代金の禁止」の定義

建設業法第19条の3の「不当に低い請負代金の禁止」とは、発注者が、自 己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した工事を施工するために通常 必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を受注者 と締結することを禁止するものである。

「通常必要と認められる原価」とは、工事を施工するために一般的に必要と 認められる価格

建設業法第19条の3の「通常必要と認められる原価」とは、当該工事の施 工地域において当該工事を施工するために一般的に必要と認められる価格(直 接工事費、共通仮設費及び現場管理費よりなる間接工事費、一般管理費(利潤 相当額は含まない。)の合計額)をいい、具体的には、受注者の実行予算や下 請先、資材業者等との取引状況、さらには当該施工区域における同種工事の請負代金額の実例等により判断することとなる。

建設業法第19条の3は変更契約にも適用

建設業法第19条の3により禁止される行為は、契約締結後、発注者が原価の上 昇を伴うような工事内容や工期の変更をしたのに、それに見合った請負代金の 増額を行わないことや、一方的に請負代金を減額したことにより原価を下回る ことも含まれる。

取引上優越的な地位にある発注者が、受注者(一人親方を含む)の選定権等を背景に、受注者(一人親方を含む)を経済 的に不当に圧迫するような取引等を強いることがあります。
「この現場は赤字でお願いします。そのかわり他の現場で儲けさせます。」、「追加工事は見積もりにないので支払わない」など一人親方様が不利にならないようにしなければなりません。

まとめ

建設業法違反となる恐れのあるケース
①元請と下請(一人親方を含む)との間で請負契約の合意がないままに工事を着工し、工事の途中または完了後に元請が一方的に請負契約を締結した。
②元請が下請(一人親方含む)に見積をする期間を与えずに、請負金額を一方的に決定(指値)する。
③元請が合理的根拠もなく不当に低い金額(通常必要と認められる原価に満たない)で一方的に請負契約を締結した。

一人親方も知るべき請負契約締結の条件

請負契約締結の条件

(1)契約は下請工事の着工前に書面で行う

請負人の義務は「仕事を完成させること」です。したがって、請負人は仕事を完成させなければ報酬を受け取れないことが大原則である。仕事の完成とは、建設工事全体のうち、請け負った工事を完成させると契約は履行したことになる。

一人親方様におかれては元請負人または下請人になることになります。
多くの場合、口頭での諾成契約が多いと思います。
しかし、元請及下請との間にトラブルが生じる場合もあります。
そのため、書面による請負契約を締結する必要があります。

建設工事の請負契約の当事者である元請負人と下請負人は、対等な立場で契約 すべきであり、建設業法第19条第1項により定められた下記の①から⑭ までの14の事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなけれ ばならないこととなっている。 契約書面の交付については、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として 下請工事の着工前に行わなければならない。
契約書面に記載しなければならない事項は、以下の①~⑭の事項である。特に、 「① 工事内容」については、下請負人の責任施工範囲、施工条件等が具体的に 記載されている必要があるので、○○工事一式といった曖昧な記載は避けるべき である。
① 工事内容
② 請負代金の額
③ 工事着手の時期及び工事完成の時期
④ 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをする ときは、その支払の時期及び方法
⑤ 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは 一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は 損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
⑥ 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法 に関する定め
⑦ 価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第2条に規定する価格等 をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
⑧ 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する 定め
⑨ 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与す るときは、その内容及び方法に関する定め
⑩ 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並 びに引渡しの時期
⑪ 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
⑫ 工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき 保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
⑬ 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金 その他の損害金
⑭ 契約に関する紛争の解決方法

このため、下請工事に関し書面による契約を行わなかった場合や下請け工事関し、建設業法第19条第1項の必要記載事項を満たさない契約書面を交付した場合及び元請負人から指示に従い下請負人が書面による請負契約の締結前に工事に着手し、工事の施工途中または工事終了後に契約書面を相互に交付した場合」は、いずれも建設業法第19条第1項に違反する。

(2)注文書・請書による契約は一定の要件を満たすことが必要

注文書・請書による請負契約を締結する場合は、次に掲げる場合に応じた要件 を満たさなければならない。

ア 当事者間で基本契約書を取り交わした上で、具体の取引については注文書及 び請書の交換による場合

① 基本契約書には、建設業法第19条第1項第4号から第14号に掲げる事 項(上記の④から⑭までの事項。ただし、注文書及び請書に個別に記 載される事項を除く。)を記載し、当事者の署名又は記名押印をして相互に 交付すること。
② 注文書及び請書には、建設業法第19条第1項第1号から第3号までに掲 げる事項(上記の①から③までの事項)その他必要な事項を記載すること。
③ 注文書及び請書には、それぞれ注文書及び請書に記載されている事項以外 の事項については基本契約書の定めによるべきことが明記されていること。
④ 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印するこ と。

イ 注文書及び請書の交換のみによる場合

① 注文書及び請書のそれぞれに、同一の内容の契約約款を添付又は印刷する こと。
② 契約約款には、建設業法第19条第1項第4号から第14号に掲げる事項 (上記の④から⑭までの事項。ただし、注文書及び請書に個別に記載 される事項を除く。)を記載すること。
③ 注文書又は請書と契約約款が複数枚に及ぶ場合には、割印を押すこと。
④ 注文書及び請書の個別的記載欄には、建設業法第19条第1項第1号から 第3号までに掲げる事項(上記の①から③までの事項)その他必要な 事項を記載すること。
⑤ 注文書及び請書の個別的記載欄には、それぞれの個別的記載欄に記載され ている事項以外の事項については契約約款の定めによるべきことが明記され ていること。
⑥ 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印するこ と。

(3)電子契約によることも可能

書面契約に代えて、CI-NET等による電子契約も認められる。その場合で も上記の①~⑭の事項を記載しなければならない。

(4)建設工事標準下請契約約款又はこれに準拠した内容を持つ契約書による 契約が基本

建設業法第18条では、「建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場 における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行し なければならない」と規定している。建設工事の下請契約の締結に当たっては、 同条の趣旨を踏まえ、建設工事標準下請契約約款又はこれに準拠した内容を持つ 契約書による契約を締結することが基本である。

(5)片務的な内容による契約は、建設業法上不適当

元請負人と下請負人の双方の義務であるべきところを下請負人に一方的に義務 を課すものや、元請負人の裁量の範囲が大きく、下請負人に過大な負担を課す内 容など、建設工事標準下請契約約款に比べて片務的な内容による契約については、 結果として建設業法第19条の3により禁止される不当に低い請負代金につながる可能性が高い契約となるので、 適当ではない。 また、発注者と元請負人の関係において、例えば、発注者が契約変更に応じな いことを理由として、下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず、下 請負人に追加工事等の費用を負担させることは、元請負人としての責任を果たし ているとはいえず、元請負人は発注者に対して発注者が契約変更等、適切な対応 をとるよう働きかけを行うことが望ましい。

(6)一定規模以上の解体工事等の場合は、契約書面にさらに以下の事項の記載が必要

建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(平成12年法律第104号。 以下「建設リサイクル法」という。)第13条では、一定規模*以上の解体工事等 に係る下請契約を行う場合に、以下の①から④までの4事項を書面に記載し、署 名又は記名押印をして相互に交付しなければならないこととなっており、そのよ うな工事に係る契約書面は上記①から⑭までの14事項に加え、以下の 4事項の記載が必要となる。
① 分別解体等の方法
② 解体工事に要する費用
③ 再資源化等をするための施設の名称及び所在地
④ 再資源化等に要する費用
*「一定規模」とは、次のそれぞれの規模をいう ア 建築物に係る解体工事…当該建築物(当該解体工事に係る部分に限る。)の床面積の合計が 80 平方メートル イ 建築物に係る新築又は増築の工事…当該建築物(増築の工事にあっては、当該工事に係る部分に 限る。)の床面積の合計が 500 平方メートル ウ 建築物に係る新築工事等(上記イを除く)…その請負代金の額が1億円 エ 建築物以外のものに係る解体工事又は新築工事等…その請負代金の額が 500 万円 注 解体工事又は新築工事等を二以上の契約に分割して請け負う場合においては、これを一の契約で 請け負ったものとみなして、前項に規定する基準を適用する。ただし、正当な理由に基づいて契約 を分割したときは、この限りでない。

一人親方の社会保険加入

一人親方(法人の代表者を除く)の社会保険加入

1 一人親方の取り扱い

労働者を使用せずに単独で仕事を請け負うことを常態とする個人事業主や一人親方(法人の代表者を除く)と呼ばれる人は社会保険被保険者とはならず、また、法定福利費の内訳明細(別枠記入)の対象からも除外されます。
このため、これらの者は国民年金や国民健康保険(建設国保等を含む)に単独で加入しなければならない。その場合の一人親方の働き方を労働者とみるか請負人とみるかについては高度の判断が必要です。
一人親方を労働者とみるか請負人とみるかは、具体的な基準が示されていないので、働き方の実態に照らして判断する必要がありますが、種々の法律等に当てはめてみた場合、つぎの(1)~(6)に掲げる要件のすべてに該当する者を個人事業主(請負人)とみなすべきと考えます。
(1)請負代金を自分の計算で見積もって請負契約を締結している。
(2)報酬は事業所得として税務署に自己申告している。
(3)一人親方の労災保険に「特別加入」している。
(4)請負人として反復継続して事業を行っていることが客観的に確認できる。
(5)個人事業主として事業拠点及び屋号を持っている。
(6)建設業の許可(500万以上の工事を請け負う場合)を受けている。

2 法人の代表者・役員の取り扱い

法人(会社)の代表者(一人親方を含む)、役員、監査役であって法人から労務の対象として報酬を受けている常勤の役員は社会保険の加入が義務となる。

3 国民健康保険組合(建設国保を含む)に加入している者の取り扱い

事業者が建設業に係わる国民健康保険組合(建設国保を含む)に加入している場合もありますが、従前から国民健康保険組合に加入している個人事業主が法人化した際、あるいは、常時使用する従業員が5人以上に増加した際に、必要な手続きである「健康保険被保険者適用除外申請」を年金事務所に行って加入している者であれば健康保険は適法に加入している。
年金制度は厚生年金に加入することになる。

4 「建設」作業員に該当しない者の取り扱い

社会保険の未加入対策が適用されるのは「建設業」を営む者です。
したがって、建設現場で行われる仕事であっても、つぎに掲げる者は建設業者または建設作業員に該当しないことになる。
(1)警備の事業 (2)清掃員 (3)場内整備員 (4)残土運搬運転手 (5)後片付け (6)草むしり (7)散水 (8)軽易な小運搬 (9)仮設物、小物の設置または撤去 (10)品質管理のための試験等の手伝い (11)その他建設作業員に該当しない者
しかし、これらの者でっても、建設業法第4条に掲げる「付帯工事(主たる建設工事を施工するために生じた他の従たる工事)」として建設工事の請負契約の中に組み込まれている場合は、建設工事の一部と判断されることがある。

参考
建設業雇用管理改善の課題

(お仕事でのケガに健康保険で治療)

労働者を雇い入れた場合の労働保険の成立手続き

労働者を一人でも雇用していれば労働保険に加入する

労働保険とは

労災保険と雇用保険とを総称した言葉で、政府が管掌する強制保険制度です。
労働者(アルバイトを含む)を一人でも雇用すれば、加入手続きを行わなければなりません(農林水産の一部の事業は除きます)。

労災保険とは

労働者が業務中や通勤途上に事故にあった場合に、必要な保険給付を行い、被災された方や遺族の方の生活を保護し、併せて社会復帰を促進する事業を行うための保険制度です。

雇用保険とは

労働者が失業した場合に、失業手当等を給付したり再就職を促進する事業を行うための保険制度です。
新たに労働者を雇い入れた場合は、保険料の納付とは別に、その都度、事業所を管轄する公共職業安定所に「雇用保険被保険者資格取得届」の提出が必要です。

特別加入とは

労災保険は、労働者以外でも、その業務の実情、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる一定の人には特別に任意加入を認めています。 これが、 特別加入制度です。

(1)中小事業主の特別加入 (第1種特別加入) 中小事業主とは、労働者を常時使用する事業主及び、労働者以外で当該事業に従事する方(業務執行権を有する役員、家族従事者など)をいいます。

(2)一人親方の特別加入(第2種特別加入) 一人親方とは、労働者を使用しない(年間100日未満)で事業を行うことを状態とする方、その他の自営業者及びその事業に従事する方をいいます。

労働保険の適用事業場情報をインターネットで確認いただけます

●厚生労働省の検索画面は、

年度途中で脱退した場合の労災保険料は返還

労災保険料を精算して未経過分を返還

労災保険料

一人親方労災保険を脱退する場合は、労災保険料を月単位で精算して返還いたします。
例えば、9月15日に脱退の申込みがあった場合、9月分までの労災保険料は必要になります。
また、月末に脱退する場合は、月末の前々日までに脱退の申込みがあれば月末で脱退できます。
9月30日に脱退を希望する場合は9月28日までに脱退する旨、ご連絡お願いいたします。

労災保険特別加入の脱退は、月単位で精算するため「月またぎ」になると月をまたいだ労災保険料が1か月かかります。
なお、一人親方様が就職した場合には就職先から「雇用保険被保険者証」を受け取ります。
その「雇用保険被保険者証」を当組合で確認することで遡及して脱退をすることができます。
脱退日を確定することで労災保険料の未経過分を精算して返還することになります。

組合費

組合費に関しては未経過分に関しても返還することができません。
まずは、お早めに当組合にご相談いただけますようお願いします。

住所が変わった場合に連絡する必要

住所変更、電話番号の変更は迅速に連絡願います

一人親方労災保険の加入後に住所または電話番号等に変更があった場合には速やかにご連絡ください。

毎年、1月中旬から2月中旬にかけて一人親方労災保険の更新案内を電話・FAXの手段以外に郵送でおこなうことがあります。
住所・電話番号等に変更があると年度更新を迅速かつ正確に行うことができません。

また、リサイクル業あゆみ一人親方組合では、常に一人親方名簿情報を最新に整備しています。

ご協力お願いします。

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